記帳代行とは?依頼できる範囲・料金目安・外注の始め方をプロが解説

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記帳代行は、フリーランスや中小企業にとって経理負担を軽減する重要なサービスです。記帳代行サービスを利用することで、本業に集中できる環境を整えることができます。
フリーランスや個人事業主、中小企業経営者の皆様にとって、経理業務は避けて通れない重要な業務です。しかし、本業に集中したい一方で、複雑な記帳作業に時間を取られてしまうのが現実です。そこで注目されているのが「記帳代行サービス」です。

本記事では、記帳代行の基本的な仕組みから料金相場、外注の始め方まで、初めて代行サービスを検討される方に向けて詳しく解説いたします。税理士法に基づく適切な業務範囲についても併せてご説明し、安心してサービスをご利用いただけるよう情報を整理いたします。

1. 記帳代行とは?(経理代行との違い)

記帳代行とは、事業者が日々の取引で発生する領収書や請求書、通帳の入出金データなどをもとに、会計ソフトへの入力作業や帳簿作成を代行するサービスです。具体的には、仕訳帳や総勘定元帳、試算表の作成など、税務判断を伴わない純粋なデータ入力・整理業務を指します。

記帳代行で依頼できる業務範囲

  • 領収書・請求書からの仕訳データ入力
  • 銀行通帳やクレジットカード明細の記録
  • 会計ソフトへの取引データ登録
  • 仕訳帳、総勘定元帳の作成
  • 月次試算表の作成
  • 帳簿の整理・管理

経理代行との主な違い

項目 記帳代行 経理代行
業務範囲 データ入力・帳簿作成 請求書発行・入金管理・支払い処理等も含む
料金相場 月額1〜3万円程度 月額3〜10万円程度
専門性 会計入力に特化 経理業務全般をカバー

税理士法上、依頼できない業務

税理士法第2条により、以下の業務は登録税理士のみが行える独占業務です:

  • 税務相談・税法に関するアドバイス
  • 確定申告書等の税務書類作成
  • 税務署への書類提出代理
  • 税額計算・節税提案

これらの業務が必要な場合は、必ず登録税理士にご相談ください。

2. 記帳代行の料金相場(仕訳数・売上別)

記帳代行の料金は、主に月間の仕訳数(取引件数)によって決まります。一般的な料金体系と相場をご紹介します。

仕訳数別料金相場

月間仕訳数 専門業者 税理士事務所 クラウド型
50仕訳以下 8,000〜15,000円 15,000〜25,000円 5,000〜10,000円
100仕訳以下 12,000〜20,000円 20,000〜30,000円 8,000〜15,000円
200仕訳以下 18,000〜30,000円 30,000〜45,000円 12,000〜20,000円
300仕訳以下 25,000〜40,000円 40,000〜60,000円 18,000〜28,000円

費用の内訳と変動要因

  • 初期費用:0〜30,000円(会計ソフト設定、過去データ移行等)
  • 月額基本料:仕訳数に応じた基本料金
  • オプション料金:
    • 領収書整理・ファイリング:月額3,000〜5,000円
    • 請求書発行代行:1件200〜500円
    • 急ぎ対応:通常料金の20〜50%増

料金が変動する主な要因

  • 月間取引件数(仕訳数)
  • 業務の複雑さ(現金取引の多さ、複数口座管理等)
  • 使用する会計ソフトの種類
  • クラウド会計との連携度
  • 納期の短さ
  • 資料の整理状況

3. 外注のメリット・デメリット

記帳代行のメリット

  • 本業への集中:記帳作業から解放され、営業や商品開発など収益に直結する業務に時間を割けます
  • コスト削減:経理担当者を雇用するより安価で、社会保険料等の負担もありません
  • 専門性の確保:経験豊富な専門スタッフによる正確な記帳が期待できます
  • ミス防止:プロによる作業でヒューマンエラーを大幅に削減できます
  • 繁忙期対応:取引量の増減に柔軟に対応してもらえます
  • 最新システム活用:AI-OCRやクラウド連携など最新技術を利用できます

記帳代行のデメリット

  • コミュニケーションコスト:不明な取引について確認作業が発生する場合があります
  • データ管理リスク:機密情報を外部に預けることになります
  • 依存度の高まり:サービス停止時の代替手段を検討する必要があります
  • 即座の確認困難:リアルタイムでの帳簿確認ができない場合があります
  • 業務理解の時間:事業内容を理解してもらうまで時間がかかることがあります

4. 記帳代行の選び方(失敗しないチェックポイント)

適切な記帳代行業者を選ぶためには、以下のポイントを確認することが重要です。

対応会計ソフトと技術力

  • 使用中の会計ソフトへの対応可否
  • クラウド会計(freee、マネーフォワード、弥生等)との連携
  • AI-OCR等の最新技術活用
  • 銀行・クレジットカードとの自動連携

サービス品質と体制

  • 担当者の専門知識・経験年数
  • 品質管理体制(ダブルチェック等)
  • 納期管理の確実性
  • 繁忙期の対応力
  • 問い合わせ対応の迅速性

業者選びの重要ポイント

  1. 無料相談・見積もりの実施:事前に詳細な説明を受けられるか
  2. 契約条件の明確さ:料金体系や業務範囲が明文化されているか
  3. 実績と口コミ:同業種での対応実績があるか
  4. 法令遵守:税理士法を正しく理解し、適切な業務範囲で運営しているか

5. 外注の流れと準備

契約前に準備すべき書類・情報

  • 金融機関関係:
    • 事業用通帳(過去3〜6ヶ月分)
    • クレジットカード明細
    • 電子マネー利用履歴
  • 取引書類:
    • 請求書(発行分・受領分)
    • 領収書・レシート
    • 納品書・検収書
  • その他:
    • 前年度の確定申告書控え
    • 現在使用中の会計ソフトデータ
    • 勘定科目設定一覧

外注開始までのステップ

  1. 業者選定・問い合わせ(1〜2週間)
    • 複数業者への相談
    • サービス内容・料金の比較検討
    • セキュリティ体制の確認
  2. 見積もり・提案受領(1週間)
    • 詳細な業務範囲の確認
    • 料金体系の理解
    • 納期・品質基準の確認
  3. 契約締結(3〜5日)
    • 契約書の内容確認
    • 秘密保持契約の締結
    • 支払い条件の確認
  4. 初期設定・移行作業(1〜2週間)
    • 会計ソフトの設定
    • 過去データの移行
    • 業務フローの確立
  5. 運用開始・定期チェック
    • 月次試算表の確認
    • 不明取引の問い合わせ対応
    • 品質・納期の評価

6. よくある質問(FAQ)

Q1: 記帳代行は税理士でないとできないのですか?

A:
記帳代行業務そのものは税理士の独占業務ではありません。税理士法第2条で定められた独占業務は「税務代理」「税務書類作成」「税務相談」の3つです。単純なデータ入力や帳簿作成は、税務判断を伴わない限り、非税理士でも合法的に行えます。

Q2: 記帳代行を頼んだら確定申告もしてもらえますか?

A:
確定申告書の作成は税理士の独占業務のため、記帳代行業者は行えません。確定申告が必要な場合は、別途登録税理士に依頼する必要があります。ただし、記帳代行で整理された帳簿データは、税理士による申告書作成の基礎資料として活用できます。

Q3: 違法になるケースはありますか?

A: 以下の行為を行うと税理士法違反となります(2年以下の懲役または100万円以下の罰金):

  • 税法に関する相談への回答
  • 節税方法の提案・アドバイス
  • 確定申告書等の税務書類作成
  • 税務署への書類提出代理

これらの業務が必要な場合は、必ず登録税理士に相談してください。

Q4: 記帳代行と経理代行の違いは?

A:
記帳代行は会計データの入力・帳簿作成に特化したサービスです。一方、経理代行は請求書発行、入金管理、支払い処理、給与計算なども含む幅広い経理業務をカバーします。料金も記帳代行の方が安価に設定されています。

Q5: どのくらいの頻度で資料を渡せばよいですか?

A:
月1回まとめて提出する方式が一般的ですが、業者によってはリアルタイム連携やクラウドストレージを活用した随時提出も可能です。事業規模や業種に応じて最適な頻度を相談することをお勧めします。

7. まとめ

記帳代行は、事業者の経理負担を軽減し、本業への集中を可能にする有効なサービスです。重要なポイントは、記帳代行が「会計処理の外注」であり、税務判断や申告業務は含まれないということです。

料金相場は月間仕訳数により1〜4万円程度が目安となり、専門業者、税理士事務所、クラウド型それぞれに特徴があります。業者選びの際は、セキュリティ体制、技術力、サービス品質を総合的に評価し、税理士法を遵守した適切な業務範囲で運営している業者を選ぶことが重要です。

記帳代行の活用により、経理業務の効率化と事業成長の両立を実現していただければと思います。税務相談や申告業務については、必ず登録税理士等の専門家にご相談ください。

免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としています。税務判断や申告手続きについては、登録税理士等の専門家にご相談ください。

また、記載内容は執筆時点の情報に基づいており、法令改正等により内容が変更される場合があります。最新の情報については、国税庁や日本税理士会連合会等の公式サイトでご確認ください。

参考文献・出典

  • 税理士法(e-Gov法令検索)
  • 国税庁「税理士制度について」
  • 日本税理士会連合会「税理士業務について」
  • 中小企業庁「中小企業・小規模事業者の経営課題」
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